イライラする、過去の恨みから離れられない、怒りをコントロールできないで爆発してしまう、怒ると涙が止まらなくなる、人に対して怒ったことがない、うまく怒りを感じられない・・・など、カウンセリングの中ではさまざまな怒りに関するテーマが出てきます。怒りは人にとってとても大切な感情です。じっくりと耳を傾けていくと、その方にとって大切なメッセージが隠れていることがあります。今回はわかりやすく「怒りすぎて困る」という悩みと、「怒れなすぎて困る」という2つに分けてみます。
怒りから離れられない方
- 「怒りすぎて困る」という方は、ついカッとなって怒ってしまった後に悔やんだり、恥ずかしい気持ちになってしまったことがあるかもしれません。特に職場や家族などこれからも長く関係が続いていく人に対して、怒りをぶちまけてしまう、という体験は周囲にとってもご本人にとってもつらいものです。アンガーマネジメントという言葉を近年耳にする方も増えているかもしれませんが、怒りについて理解したり、深呼吸などをして気持ちと距離を取ることが怒りを鎮めるのに役に立つことがあります。しかし、そのように頭で怒りを制御しようしても、どこかでくすぶり続けて最終的には人前で怒りが爆発してしまう方もいらっしゃいます。
- このような方には「怒りの下にある感情」に目を向けることが役に立つことがあります。「怒り」として感じられた感情も、カウンセリングでその感情にじっくり取り組むと、実は怒りというより「傷つき」や「不安」、「自分の価値を感じられない感覚」などが中核にある場合があります。そのような場合は、その中核にある脆く傷つきやすい感情にじっくりと取り組むことが、結果的に破壊的な怒りを生じさせない結果につながることがあります。
怒りに触れられない・表現できない方
- 「怒れなすぎて困る」という方は、もしかしたら最初はご自身に怒りの感情があることにも気づいていないかもしれません。日常生活の多くのことが「自分のせいで生じている」、「自分に責任がある」と理解しているかもしれません。そのような対処は、責任を多く引き受けることで人との衝突を避けてご自身を守ってきたかもしれません。しかし、人にとって「正当な怒り」「健全な怒り」が抑え込まれてしまうと、自分を攻撃してしまったり、別の衝動的な形で怒りが出てしまったり、気力がなくなってしまったりすることがあります。怒りは自分の心理的な境界(バウンダリー)を保つために大切な感情です。人からハラスメントを受けてもその場にい続けてしまったり、仕事や家事など過重な負担を押し付けられてしまったり、経済面で自分が不利な立場を受け入れてしまったり、怒ることができないと状況が苦しくなってしまうこともあります。
- 安全なカウンセリングの中でしっかりとその怒りの感情に触れて、体験して、表現する、という作業をすることは、「適切で安全な怒りの出し方」を身につけていくために役に立ちます。しっかりと必要な怒りを感じ、心の中に拳を掲げている自分、「NO!」とはっきり言える自分が感じられることはとても頼もしいものです。DVやハラスメント、差別などの環境から抜け出すため、抑うつ状態から抜け出すためなどに、健全な怒りはとてもパワフルな力をもたらしてくれます。
怒りを適切な人に、適切な形で表現することはとても難しいことです。そして人によってその強さや性質も異なります。怒りに関連して悩まれている方などいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。